複式簿記において、すべての勘定科目は「借方と貸方」という左右に分けることで、増加と減少を表現しています。
例えば、家計簿も簿記の一つです。
大抵の家計簿は、日々買ったものを記録していくものですから、現金が増えたか、もしくは、減ったかを記録して、後で分かるようにすればいいものです。
一方、事業で使う帳簿は取引を記録していく必要があります。
事業でどのような行動をとったか、日々の取引を一つひとつを毎日継続して記録して、
「1年間ごとに確定申告により所得を計算し、納税額を算出し、所得に対する納税を行う。」そのためにも記録していくことは大切です。
1年の最後にまとめて記録して集計することで、収入や支出の内容を忘れていることも考えられます。その状態で記録した帳簿に、はたしてどこまで信頼性が確保できるでしょうか。
このことから、帳簿は信頼性のあるものとするべく、短い間隔で、継続して記録することが大切です。
記録方法の違いについて、例えば…
例:110円の商品を仕入れて現金で支払った。
上記の取引は、「仕入が110円増加した」と「現金が110円減少した」という、2つを記録する必要があります。
家計簿のように1つの金額の増減(現金の増減)を記録する簿記を「単式簿記」といいます。
一方、同時に2つの金額の増減を記録する簿記を「複式簿記」といいます。
それでは、複式簿記の仕訳について解説いたします。
目次
借方と貸方
仕訳
仕訳を集計
1.借方と貸方
複式簿記(以下、簿記)は、まず「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の5つの要素を「借方(左側)」と「貸方(右側)」に区分します。
借方と貸方の覚えとしては、
※いい大人が描く借方貸方の覚え方
5つの要素と借方・貸方の関係は、
※いい大人が描く資産・負債・純資産
※いい大人が描く収益・費用
資産は借方で、負債と純資産は貸方。
費用は借方で、収益は貸方となります。
2.仕訳
これらの5つの要素を借方(左側)と貸方(右側)に区分し、仕訳の際に勘定科目を左側に配置するか、または、右側に配置するかにより、金額の増減を表現しています。
※いい大人が描く仕訳
例えば「現金」という勘定科目は、「資産」に該当しますから、「借方」に配置されます。
借方に配置される現金を左側(借方)にして仕訳を行うと、現金の増加を意味します。
また、借方に配置されるる売上を右側(貸方)にして仕訳されていますから、売上の増加を意味します。
このように複式簿記では、複数の勘定科目の増減も表すことができます。
それでは、練習として例を挙げてみます。
例:7月7日に1,000円の商品を売り上げて、代金は月末(7月31日)に現金で受け取ることとした。
7月 7日:
商品の売上と、未回収の売上債権(売掛金)のそれぞれが増加させる仕訳することとなります。
まず、取引の内容(勘定科目)が借方と貸方のどちらに帰属するものなのかを考えると、「売掛金=資産(借方)」、「売上=収益(貸方)」です。
例において売掛金と売上は増加する取引の内容で、増加額はそれぞれ1,000円です。
そのことから、勘定科目の配置を考えると、資産(売掛金)の増加は借方に配置、収益(売上)の増加は貸方に配置して、勘定科目の右側に1,000と記載することとなります。
仕訳:
(売掛金)1,000 /(売 上)1,000
※「/」の左側が借方で、右側が貸方です
7月31日:
この日の取引は、7月7日の売上にかかる代金を現金で受け取りました。
したがって、まず現金が増加します。そして、未回収となっていた金額を受け取ったので未回収額がなくなった(=減少した)ことを仕訳にします。
もしも勘定科目が借方か貸方か分からなくなったら、まずはどちらか一つ分かりやすい方を埋めます。
今回は、現金を1,000円受け取ったことから、手持ちの現金が増加した(=資産が増加した)ことから、資産の増加は借方に配置することとなりますから、現金勘定を借方におきます。
(現 金)1,000 /(???)1,000
次に貸方を考えます。
なぜ現金が増加したのかというと、未回収の債権額を受け取った(=未回収の債権額がなくなった)からなので、債権(売掛金)である資産が減少することを仕訳にします。
資産の減少ですから、資産は借方のため貸方に資産の勘定科目を配置することで減少を表現できます。
(現 金)1,000 /(売掛金)1,000
これで、現金という資産の増加と、売掛金という資産の減少を仕訳にすることができました。
3.仕訳を集計
仕訳を作成した後は、それぞれ科目ごとに集計するために「総勘定元帳」へ転記します。
そして、総勘定元帳に転記した集計額を収益と費用の科目ごとにまとめた表が損益計算書(そんえきけいさんしょ)であり、資産・負債・純資産を科目ごとにまとめた表が貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)といいます。
複式簿記では、複数の勘定科目の増減を表現できることから、収益と費用の状態である経営成績を損益計算書で把握し、資産や負債といった財産の状態である財政状態を貸借対照表で把握することができます。
例:各取引日における損益計算書と貸借対照表の状態
7月 7日:
(売掛金)1,000 /(売 上)1,000
上記仕訳を仕訳帳に記録して、
総勘定元帳において各勘定科目で集計します。
この時点での損益計算書と貸借対照表は、
損益計算書において、売上高が1,000円貸方に記録されているのが分かるでしょうか。
費用はないため、一番下の収益-経費の利益(サンプルの表記は差引損益計算)は1,000円となっています。
貸借対照表においては、売掛金が1,000円借方に記録されているのが分かるでしょうか。
損益計算書において計算された利益は、貸借対照表上の純資産(貸方の負債の下)に格納され、必ず借方と貸方の合計は一致します。
7月31日:
(現 金)1,000/(売掛金)1,000
仕訳帳と総勘定元帳への転記は割愛させていただき、7月31日時点での損益計算書と貸借対照表はどうなっているでしょうか。
損益計算書においては、仕訳に収益および費用の勘定科目が使用されていないため、変動はありません。
貸借対照表においては、売掛金の回収として受け取った現金の増加1,000円が借方に計上され、この時点での現金残高が1,000円と表示(右から2列目の期間残高列)されています。
また、現金で受け取った売掛金の減少1,000円が貸方に計上されており、この時点で売掛金の残高は0円となったことが表示(右から2列目の期間残高列)されています。
左から2列目の期首残高には事業年度の初日の金額が表示されており、さらに右列の借方金額列と貸方金額列に期中(年の途中)の変動が集計されます。
このことから期中に売掛金は、借方に1,000円あることから1,000円増加して、貸方に1,000円あるため1,000円減少したことも表現されています。
まとめ 毎日の取引を、手書きでこのように記帳していくのはなかなか大変です。
会計ソフトで取引を記帳していくと、自動で集計されますから、転記作業は不要で、仕訳を登録するだけでよくなります。
ただし、その「仕訳を作成するには知っておくことがある」という内容をまとめてみました。
すこしでも、記帳作業のお役に立つことができれば幸いです。
記帳作業については、代行もしておりますので、お困りの際はご検討いただけますよう、よろしくお願いいたします。
以上です。ありがとうございました。
今後ともよろしくお願います(。-`ω-)